山のふもとにある私の実家。
山というか、林というか。
小さい集落で、だけどうち以外全部の家が空き巣に入られたことがある、危険な田舎です。
それなのにうちは、鍵を40年前に失くしたままな挙げ句、ネコが出入りするからと年中勝手口は開けっぱなしで、しかもそれを皆知っているので勝手に開けて家の中に物を置いていく。
割と最近まで五右衛門風呂で、黒電話。
牛乳はビンで、やはり家の中まで配達である。
支払いは全て集金で、皆ちゃーんと祖母のデイサービスの曜日を把握している。
ちなみに救急車が来ようものなら野次馬がかなり集まり、やはり数人は家の中に勝手に入り様子を見に来ます。
沖縄の離島で暮らした時もこんな感じだったけど、人との距離がものすごく近くて、とにかくお店がない。
お店がないので自然と遊ぶしかなくて、小さい頃はどこに行くにも弟を引き連れて、よく山や小川に探索ごっこをしたものです。
ある日はこっちの山に入ってみようよ、と入ってみたり、畑とか、あっちは滝があるんだって!見に行こうよ、とか。
でも山に入って入り口が見えなくなる手前で必然的に戻ったし、滝は草に覆われていたので近づくのをやめました。
今思えば幼いながらにかなりの想像力が備わっていたのと、それによって危機感(というより恐怖感)もあったし、親の言葉もよぎった。
「滝は底なし沼、草むらの中にあっていきなりズボッと入るよ、入ったら抜け出せないからね」「死ぬよ」と脅され、それでも近づくのが子供心だけど「死ぬよ」はさすがに怖かったです。
あれから数十年。
娘は2歳ですでに好奇心旺盛な子になりました。いずれあの頃の私と同じようなことをするでしょう。
イヤイヤ期がまだ続いていて、何をするにも全部逃げます。追いかけるともっと喜んで逃げる。
私もあの頃の母と同じく
「歯磨きしないとね、ムシムシさんに歯を食べられて真っ黒な穴が開いて…チックンだよ!」
と、コンコンと説得する。
とりあえず今は、逃げるけれども嫌がらずにやってくれるだけ嬉しい。
人もそうだけど自然との関わり方は、難しいですよね。
今はまだ目に入る範囲にいてくれるけど、きっと大きくなるにつれてもっと考えるようになることでしょう。
「絶対死なせない」
むしろそれだけが我が家のモットーかもしれない。
ストロー危ないですよ!
実家の鍵もいい加減作ってほしいなぁ。